2011年3月11日東日本大震災が発生し、茨城、福島、宮城、岩手、千葉県に未曾有の被害をもたらした。加えて東京電力福島第一原発事故が発生し、日本国でも未曾有の放射能汚染被害となった。原発が安全ではないこと、一度事故が起きれば、それこそ国が存立できないほどの大惨事になる危険性を痛感した。何より市民一人ひとりの生命は何としてでも守られなければなりません。いまだに、福島原発事故の原因さえ究明されておらず、放射能汚染水は海への浸水が止まらず、被害にあわれた方々が安心して暮らせる環境の整備もなされていない。東京電力は補償もそこそこに早く幕を引くことのみばかりの活動が、なんともやりきれません。そして国の政策も被災者お一人おひとりに手を差し伸べるどころか、当たり前の生活をしたいという要求に聞く耳を持っていないのも、憤怒おさまりきらず、という思いである。
東海第2原発を抱える私たち住民にできることは、特に危険性の高い老朽原発である日本原電東海第2発電所の再稼働に反対し、最終的には原子力廃炉技術そして再生可能エネルギーのエキスパートとしての日本原子力発電の歩みを一日も早く進めてもらいたいと切に願うものである。
福島第一原発事故後、住民の中に広範に生まれた原発への不安を受け止め、また、避難計画の策定などを含め、自治体として原発への基本的な立場を明確にするためにも、東海第2原発が立地する茨城の地方政治に関わる立場として、しっかりとした論議と政策選択を行うべきと考える。東海第2原発の問題は優れて地方自治の問題であり、自治体議員相互の連携を強め、情報交換や議論を活発に行うことで、それぞれの議会における政策論議を積極的にリードしていく必要がある。
そもそも1978年11月に運転を開始した東海第2原発は、35年が経過する老朽原発である。設計上の耐用年数が40年であることに加え、大量の使用済み核燃料を抱えている危険性がある。ドイツでは、東電福島第一原発事故を受けて、全17基の原子炉を全て停止させ、最も危険度の高いと判断された8基をそのまま廃炉と決定した。事故当事国であるわが国では、最早あらゆる意味で「安全神話」は成り立たない。何よりも住民を放射能汚染の脅威から守るべく、一日も早い危険炉の廃炉を実現するため、政治的・経済的・住民合意のあり方を含めて具体的な検討を前に進めなければならない。
東海村の村上達也村長が25日、市民団体に招かれて那珂市で講演した。東京電力福島第一原発の過酷事故を経ながらも、原発再稼働を進める政府や電力会社の姿勢を批判。「原発に依存している限り、未来は開けない」と述べ、原発推進の阻止を訴えた。
村上村長は、県内11市町議会で、日本原子力発電東海第二原発の再稼働中止や廃炉を求める請願が採択されたと紹介。「保守王国茨城で、これだけの決議がされたのは前代未聞だ。住民の働きかけが功を奏している」と評した。
発送電分離や、電力会社が見積もる費用をもとに電気料金を決める「総括原価方式」の見直しなどが「何も決まっていない」と批判。「現状のまま政府が原発を推進しようとする限り、原発事故は再び確実におこる。こうした動きを我々は阻止していかなくてはならない」と訴えた。
朝日新聞 2012年3月26日
Q 2度の原子力事故を目の当たりにして思うことは。その教訓とは何か。
JCO臨界事故も慢心が招いたもので、この国はいつまでも反省しないという印象だ。利益を追求するあまり、原発推進を「国策だ」と言い続け、安全神話を作るなど、極めて内省に欠ける国だということ。JCO臨界事故の時も思ったが、今回も案の定だ。何にも学んでいない。福島第1原発事故の初期対応を見ても、何という国だと思った。
Q 国の原子力政策、エネルギー政策をどう見るか。震災と福島第1原発事故で見えてきた日本の電力供給の問題点とは。
日本は地震多発地帯で、1900年からの100年間でM8以上の地震回数は世界一という報告がある。そんな国に54基も原発を置いていいのか。正気の沙汰とは思えない。しかし、日本は原子力推進そのものがエネルギー政策で、自然・再生可能エネルギーの発展を封じていた面がある。原発は炭酸ガスを出さないから環境にいいと言い、放射能・放射線の問題にはふたをして、原発の後処理も後世に先送りしてきた。それはまさに、哲学なきエネルギー政策だという気がする。
Q 「脱原発」は可能か。日本における再生可能エネルギーの可能性は。普及を進める鍵は。
福島第1原発事故を起こした以上、日本は脱原発について真剣に考える義務がある。脱原発を追求しなければならず、できるできないはその次でいい。自然エネルギーについても、ドイツやデンマークなどは既に取り組んでおり、技術開発も進んでいる。日本でも可能性はある。日本人の勤勉さやこれまで蓄積した技術からみても可能だろう。世界最高水準になれると思う。あとは政府のやる気次第だ。
Q 東海第2原発の再稼働をどのように判断するか。
私は、福島のように全村避難して戻れないとか、東海村が地図上から消えていく、そういう事態にはしたくない。福島の事故で、国は避難した人たちをどう救済するのか。つまり、国がわれわれの安全を保障できるのか。そこが担保されない以上、判断はできない。
津波対策や非常用電源対策の強化だけでは十分ではない。福島第1原発事故の問題も明らかにしてもらわなければならない。ストレステストは、再稼働のための政治的方便ではないか。
それと安全規制体制をどうつくるのか。原子力安全庁の話は出ているが、さっぱり見えない。これも判断の鍵となる。(東海第2原発の再稼働は)今の時点ではまったくの白紙だ。
Q 最後に、今後の日本のエネルギー政策への提言を。
エネルギー消費を減らして経済のスピードを落とし、思い切って自然エネルギーの導入に向けて政策誘導すればいい。自然エネルギーはこれまで、政府が後押しした電力会社が壁となり入り込めなかった。自然エネルギーに対する助成を、新しい技術開発に向けた投資だと思ってやったらいい。ドイツがやると言っているのに日本でできないわけがない。あとは政治家の決断だ。
茨城新聞 2011年10月1日(土)
(作成:広報広聴課)平成23年10月18日(火曜日)11時15分~ 5階 会議室
○東海村長の「東海第二発電所」の廃炉要請について
時事(幹事社):代表して何点か質問させていただきます。
1点目ですが、東海第二原発に関して、今月11日に、東海村の村上村長が、細野原発担当相に対して、廃炉を求めて改めて脱原発の方向性を明らかにしたのですが、改めて知事のご見解を聞かせてください。
知事:原子力もそうですが、これから日本としてエネルギーをどうやって確保していくのかについて、しっかりした方向を出すのがまず第一だろうと思っております。その中で、原子力について、脱原発が本当に可能なのかどうか。例えば、経済面への影響なども考えて検討していかなければいけませんし、原子力の扱いについてきちんと議論をしていくことが必要なのだろうと思っております。私どもとしては、いずれにしても、来年8月まで(東海第二発電所の)定期検査の期間が延長されておりますので、これから国としての意向、あるいはまた他県の動向などをよく見ながら判断をしていきたいと考えております。
東京:先日、東海村の村長とお話をされたと思うのですが、東海第二原発についてどういうお話をしたか、もう少し詳しくお願いします。
知事:東海村の村長からは、県に何の説明もしないままで国へ行ってしまったので、その辺の事情についてお話ししたいということがメインでありまして、これからもっと県のほうと連絡を密にしていきたいという話がありました。私のほうからは、いろいろな考え方があるものですから、そういったことについて説明をさせていただいて、意見の交換をしたというところです。
東京:村長は、知事から、あまりなたを振り上げるべきではないというようなお話をされたということですが。
知事:いや、そういうことは言っていません。ただ、原子力について、これからどうしていくかということについてはともかく、特に村長に話しましたのは、電力会社を分割して送電などは別な会社にすればいいのではないかとか、いろいろなことを言われておりますので、私としては、今の段階でそういう結論というか、方向づけに向けて動くのは早いのではないか(ということを申し上げました)。特に、東京電力が解体して発送電分離になっていきますと、今度の原子力事故の責任をどこがとるのだろう。責任をとる企業がなくなってしまうのではないか。国は、一応、指導・監督責任はあるにしても、被害を受けた県民として一番に責任をとってもらわなければいけないのは東京電力ですので、それが仮に発送電分離という形で会社の形態が変わってしまった場合に、今までと同じように責任を求めていけるのかどうかといったことも課題になってくる。いろいろな点で、今ですと(東京電力が)全くの事故の当事者でありますから、我々としては、きちんと責任をとれということは言えるわけですが、もし形態が変わった場合には、そういうことも今のような形では言えなくなる可能性もある。そういうもろもろのことを考えていく必要があるのではないかということは申し上げました。
東京:あと、もう1点ですが、県南のほうで、取手市議会で廃炉の決議をするとか、かなりナーバスになっていると思うのですが、30キロ圏外の自治体の意見とか、そういうものを何かしらの形で聞くような手段とか術は考えていらっしゃいますか。
知事:先ほども申し上げましたが、一応、来年の8月まで定期点検が長引いておりますので、今の段階では当面の対応を先にするのが第一だろうと思っております。健康被害(への対応)とか農産物の出荷制限とかいろいろなことが次から次へと出てきていますので、そちらのほうに対応していくことがまず第一ではないかと考えております。
朝日:関連で、東海第二の件ですが、東海村議会で、議会に了承なく、村長のご判断で提案されたことに対して是々非々があったようですが、提案の仕方というか、市町村のトップの方が、大臣に対して、要望ではなく提案というふうにおっしゃっていますが、意見の表明の仕方について、知事として何か思うことはありますか。
知事:提案というのは、結局、民主党はあのような形での要望は聞かないことになっていますので、提案ならば受け付けるということですから提案になったのだろうと思いますが、東海村長として報道されますから、あのような重要なことについては、ある程度議会に対しても意見の交換はしておいたほうがいいような気がいたします。
朝日:県とも本当は事前に何か連絡があってしかるべきだったというふうにお考えですか。
知事:それは独立している地方自治体同士ですから、上下の関係にあるわけではありませんから、別に県に説明しなくてはいけないというものではありません。ただ、できるだけ同じ歩調をとっていけたほうが、茨城県、あるいはまた東海村にとっていいことなのだろうと思います。
NHK:関連で、村長との意見交換のときに、改めて村長から廃炉にすべきだという考え方は示されたのでしょうか。
知事:あまりよく思い出しませんが、廃炉にすべきだということを特におっしゃられたというのではなくて、こういうペーパーを細野大臣にお渡しして提案をしてきたということの説明を受けました。時間が非常に限られていたので、紙に書いて持っていったという話でした。
茨城:関連です。今の東海第二の件ですが、現時点では、知事と村上村長は同じ歩調をとるのは難しい状況なのでしょうか。
知事:私としては、今すぐ廃炉を打ち出すべきかどうか(については)、国のほうで脱原発という方向をにらみながら議論が進んでいるところでありますので、比較的古い部類に入ってくる東海第二発電所について、再起動の要請があるかどうかまだ見当がつかないところでありますから、それがあって初めてどうするか、県としてもしっかり検討していく必要があるのだろうと思います。またその間、多分、多くの原発について国の意向と地元の意向のすり合わせが行われていくと思いますので、そういったことも参考にしていきたいと思います。
○茨城県原子力安全対策委員会について
東京:原子力安全対策委員会ですが、住民グループが公開してほしいというようなことを言っていまして、静岡とか新潟なんかでは公開されているとか、そういう意見もあるようなのですが、これに対してはお考えはいかがですか。
知事:基本的に、委員の皆さん方に、全面公開するかどうかも含めて意見をお聞きした上で決定していきたいと思っております。多分、できるだけ公開する方向で運営されていくのだろうと思います。委員の皆さん方から、あまり公開されていると非常に意見が言いにくいとかいうことがたくさん出てくれば別ですが、そうでなければ、多分、公開する方向でいくのだろうと思います。
○除染について
茨城:今月に入りまして、環境省が放射性物質の除染の基本方針案をまとめたのですが、それとは別に、専門家の間から、里山とか低地林とか、そういった森林関係の除染について、この秋の落ち葉を除去したほうが非常に効果的だし、来年の落ち葉が降り積もる前に取り除いたほうがいいという意見が出ておりますが、非常に難しいと言われている森林、里山の除染について県は何かしらの施策をとる予定はあるのでしょうか。
知事:森林、里山なども含めて、(年間)1ミリシーベルト以上の影響が出そうなところについては、公表された地図で示されておりますが、県の北部のほうとか南部のほうは一部該当しそうなところもあるものですから、そういうところについてはしっかりした資料をもらって、そして対応していかなければいけないと思っております。
その場合に、山についてどうするかということは大変大きな課題だと思います。里山といっても、(放射性物質が)葉っぱにたくさんついている可能性があるわけですので、今の段階(で除染した方)がいいのか、そういうものが落ちた後のほうがいいのかなど、いろいろと検討しなくてはいけないと思っております。
そういうことについて、国としてきちんとした方針を示してほしいというのが我々の期待であります。それぞれ県によって違った方法を打ち出しても困るものですから、そういう点ではしっかり検討を進めてほしいと思います。
取手市議会は9月28日、東海第2原子力発電所の再稼動中止と廃炉を求める意見書の決議を16対10の賛成多数で採択しました。県内の自治体では、もちろん初めての決議で、首相、衆参議院議長、県知事に意見書が送付されます。
【東海第2原発再稼動、85%が消極的 茨城大学の住民調査】
定期検査中の日本原子力発電東海第2原発(東海村)の再稼働について、茨城大が実施した周辺住民のアンケートで、消極的な意見が全体の85%を占めたことが7日までに分かった。
アンケートは茨城大地域総合研究所が昨年から始め、今回で2回目。6〜8月に東海村と、隣接する3市の計4千人に調査票を郵送し、33%の1320人が回答した。
調査結果によると、回答者の40%が「耐震防潮対策を徹底するまで運転すべきでない」、32%が「停止したまま廃炉に向けて準備を」、13%が「再稼働は凍結して地域で白紙から議論すべき」と答えた。「老朽原子炉に代わる新型炉を新設」は6%、「早く運転再開を」は5%にとどまった。
また、運転開始から30年以上経過した同原発の安全性については、60%が「保守点検し慎重に運転しても危険」と回答、昨年の37%から大幅に増えた。
調査を担当した同研究所の渋谷敦司教授は「福島第1原発事故が住民の意識を大きく変えた。住民同士が話し合える場をつくり、再稼働の判断に意見を反映させることが必要だ」と話した。(共同)
2011年9月7日(水) 茨城新聞
2011.6.30 16:51 産経新聞
取水口エリアの海水ポンプを視察する橋本昌知事(左から2人目)=東海村白方の東海第2原発(前田明彦撮影)
橋本昌茨城県知事は30日、東日本大震災で原子炉が自動停止した東海第2原発(茨城県東海村)を訪れ、津波により海水ポンプが水没した取水口エリアなどを視察した。震災後、橋本知事が同原発を視察するのは初めて。
橋本知事は午前9時半ごろ、同原発の原子炉建屋の使用済み燃料プールや海沿いの取水口エリアなどを見て回り、その後、日本原子力発電が外部電源喪失時の対応として配備した電源車も視察した。
橋本知事は取水口エリア視察後、記者団の取材に応じ、「震災で起きた現象については、(同原発が)対策を講じようとしている」と一定の評価をした。また、同原発は11月中旬までの定期点検で運転停止中だが、その後の再稼働の時期については「(巨大地震に対し)どこまで対策を取ればいいのか分からない」と述べ、国の安全対策が示された上で議論すべきだとして、明言を避けた。
一方、国が浜岡原発(静岡県御前崎市)だけに稼働停止を要請したことに「十分な説明がない」と改めて不快感も。29日に海江田万里経済産業相が玄海原発(佐賀県玄海町)の運転再開について、国と九州電力が安全について責任を取ると明言したことに対し、「(福島第1原発など)ああいう事故が起きたときにどういう責任の取り方をするのかはっきりしていない。国が安全について責任を取るというのは口だけという感じがする」と痛烈に批判した。